飛騨市(岐阜/富山) 高幡山(1332.1m)、池ノ山(1368.6m)、 2019年4月28日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:11 駐車箇所−−7:52 長棟峠−−8:02 1200m峰−−8:09 1170m鞍部−−8:44 高幡山(休憩) 9:12−−9:27 1170m鞍部−−9:35 廃林道−−10:00 林道−−10:40 林道を離れる−−10:57 池ノ山(休憩) 11:49−−12:12 1168m鞍部−−12:39 長棟峠−−13:24 駐車箇所

場所富山県富山市/岐阜県飛騨市
年月日2019年4月28日 日帰り
天候
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場林道の路側に駐車余地あり
登山道の有無無し
籔の有無林道〜長棟峠まではほぼ藪漕ぎ。県境稜線に乗ってから残雪が現れて藪漕ぎは1割程度
危険個所の有無無し
山頂の展望高幡山:東側が開ける  池ノ山:南側が開ける
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント跡津川沿いの林道から長棟峠経由で2山を往復。長棟峠までは残雪はほぼ消えて杉植林帯以降は藪漕ぎが続くがそれほど濃くないのが幸い。地形図に出ている沢沿いの道は存在しない。県境稜線は大きなアップダウンは少ないが複雑な地形が多く、展望が無い日は下りのルート判断で苦労しそう。池ノ山では環水平アーク、ハロ、幻日環を同時に見ることができた。どれも生まれて初めてでかなりはっきり見えて感動! 高幡山では人に出会ってびっくり


地図クリックで等倍表示


林道脇の駐車余地 破線が描かれた沢。道はありそうにない
山側はこんな急斜面。沢付近からよじ登る 急斜面を這い上がると植林帯へ。藪無し
標高690m付近 標高700m付近
標高730m付近 標高750m付近
標高790m付近。明瞭な巻き道 巻き道から藪が薄い西斜面に取り付く
標高830m付近 標高910m付近
標高940m付近。一番傾斜がきつい 標高1000m付近。古い赤ペイント
標高1020m付近。ここだけ目印あり 標高1050m付近
標高1080m付近。ここで左の谷へ 新雪で濡れるので雨具装着
谷へトラバース気味に下る 谷に降りる。やっと古い雪が登場
標高1120m付近。藪を右から迂回 長棟峠南端。北へ水平に伸びる
ここが県境 県境を東へ登り始める
標高1990m付近。古い雪が登場 1200m峰。目印があるが道は無い
熊棚ではなくヤドリギ 1190mのなだらかな尾根
1170m鞍部 県境北側の谷、標高1180m付近
標高1220m付近 標高1270m付近。谷の終点
標高1290m付近。藪を避けて右の谷へ 谷から突き上げる
1320m肩で県境に乗る 山頂向けて東へ
高幡山山頂。目印だけあり 高幡山から見た横岳
高幡山で単独男性に遭遇。これから横岳だそうだ 標高1160m付近。1200m峰北側の谷を下る
標高1120mで長棟峠に至る谷に合流。右岸に廃林道 左岸を高巻きするが藪に阻まれる
谷へ下って右岸の廃林道へ 下ってきた斜面
廃林道 標高1070m付近。左から沢が合流
急斜面をよじ登って地形図の林道へ 路面状況からして現役の林道らしい
球状のヤドリギ 林道から見た槍ヶ岳
林道から見た薬師岳〜黒部五郎岳〜笠ヶ岳
標高1230m付近。左へ廃林道が分岐 標高1260m付近。林道は右へ。山頂方向の左へ進む
標高1260m付近から見た東側 標高1290m付近から見た剱岳
太陽の周囲に虹の輪(ハロ)がかかっていた 標高1300m付近。正面の空に虹色が
生まれて初めて見る環水平アーク 地形図に出ている凹地。多分坑道崩壊の影響
標高1330m付近 ハロの他に幻日環も見えた。生まれて初めて目撃
県境に乗ると目印あり 県境。目印どころか刈り払われた道があった!
池ノ山山頂 池ノ山山頂。南東を見ている
池ノ山山頂からの360度展望写真(クリックで拡大)
池ノ山山頂でもまだ環水平アークが見えていた 池ノ山から見た乗鞍岳
長棟峠向けて下山開始 標高1350m付近
標高1350m付近の目印 標高1350m付近でも刈り払われた道が続く
標高1330m付近。道を見失い藪を避けて北へ 標高1320m付近
標高1290m付近。県境のすぐ北で道に合流 標高1260m小鞍部
木に飲み込まれた境界標識 標高1240m付近で刈り払いは南東へ下る
標高1230m付近の県境。刈り払いは無い 1168m鞍部。地形図では林道が書かれている
標高11800m付近。ちょっとだけ藪漕ぎ 1230m峰
1224m峰 標高1200m付近
標高1180m付近 長棟峠に到着
林道へ向かう 標高1070m付近。微小尾根末端
標高1060m付近 標高940m付近の目印
標高920m付近 標高790m付近
標高750m付近。植林帯上端 標高650m付近
林道直上。急斜面を下る 林道到着
ゲート前には1台駐車 林道脇のかぐらトンネル入口
かぐらトンネル入口


 池ノ山、高幡山は旧飛騨神岡/富山県境に位置し、登山道は無い。昨年秋にこの尾根の続きにある横岳に無雪期に登り、かなりの濃さの根曲がり竹に苦労した経験から、県境稜線の藪の濃さは良く分かった。ただし、池ノ山は北側の林道から程近いため短時間の藪漕ぎで登ることが可能そうなので無雪期でも大きな問題はなさそうである。一方の高幡山はそうはいかず、残雪期に登るのが得策だろう。そしてどうせ登るなら池ノ山と抱き合わせが効率が良いので、日帰りで2山を片付けることにした。両者に登るのなら佐古集落近から適当な尾根で長棟峠に上がり、東西に振り分けて登るのがいいだろう。地形図では長棟峠から南に落ちる谷には破線が描かれているが、ここに道があるとは到底考えられない。

 今年の大型連休は6日間の休日出勤があり、自分にとっては通常の週末と大差なし。遠出やテントを背負っての長距離山行は無理で、こんな時こそ池ノ山、高幡山の出番だ。前日に寒気が入って標高の高い場所では降雪があり、新雪ラッセルを避ける意味でも標高があまり高くないこの山は適当だろう。なお、今年の連休初日は山は予想通り大荒れで北アルプス各所で計4人の死者が出た。

 跡津川沿いの林道に入るのはこれで3回目。もうカーナビの助けは不要で国道から右に入り、狭い林道を上がっていく。ゲートは佐古集落の先にあるのだが、今の時期は手前の跡津川集落の奥で道路の端に車止めが置いてあった。ただし今は林道に雪が残っている可能性はゼロなのでそのまま進み、長棟峠から落ちる谷にかかる橋の近くの駐車余地に駐車し仮眠。天気予報どおりに好天で満天の星空だった。

 睡眠時間確保のため動き出しは遅く、出発は6時過ぎで周囲は十分に明るい。見える範囲に残雪はゼロ、ただし傾斜がきつく目標地点はここから見ることはできないので新雪が無いとは言えないが、あってもそれほど多くは無いだろうとワカンは置いていくことにした。たぶんピッケルやアイゼンも不要と思われるが、念のために軽アイゼンと軽ピッケルを持ったが使うことは無かった。

 地形図で長棟峠に続く破線が描かれた沢は雪解け水で水量が多く、両岸が切り立って沢の中を歩くのは無理なので計画通り尾根歩きとする。地形図を見ると右岸側の方が全体的に傾斜が緩いのでそちらへ取り付くことにしたが、左岸側と違って林道側は垂直に近い法面で簡単に取り付けない。沢のすぐ近くの薄い獣道を利用して僅かな潅木や草に掴まりながら強引に登り、杉の植林帯に達すれば安全地帯。こんな山の中でも既にスギ花粉シーズンは終了で花粉は全く感じられないのが幸いだ。

 植林帯で傾斜が緩んだといっても結構な傾斜であり、準備運動無しでのきつい歩きなので意識してゆっくりと登っていく。植林中は間伐して放置された丸太が邪魔であるが藪は皆無で比較的歩きやすい。こんな植生が続けばいいが、降雪地帯では植林は尾根下部だけの場所が多く、植林帯が終わった先の植生が心配だ。

 標高690m付近で尾根直上に出るが西側は自然林で、植林中と違っていきなり潅木や根曲がり竹が登場するので藪が無い東斜面の植林帯に戻って高度をできるだけ稼ぎ、標高730m付近で植林帯が終わると尾根直上の根曲がり竹藪を登っていく。通常、この標高ではまだ笹や根曲がり竹は登場しないのだが・・・。これではさらに標高が高い場所での藪の状況が思いやられる。私の場合、笹にアレルギーがあるので触りたくはないがそうもいかない。幸い、まだ気温は低く長袖なので体で皮膚の露出した部分は顔くらいだ(でもその後蕁麻疹が出て抗アレルギー薬のお世話になった)。昨日降った新雪が地面にごく僅かに残っているが、高度が上がると枝葉の上にまだ残っている可能性が。その場合、体が濡れてしまうので雨具が必要になるだろう。今日はそれを想定し、ゴアではない安物の雨具を持ってきた。

 標高790m付近で尾根を横切る非常に明瞭な道が登場。ほぼ水平に伸びていてここは藪が無く歩きやすい。尾根直上は藪っぽいので少しでも薄い場所を登ろうとこの道を西に進んで、斜面の藪が薄くなった場所から斜面へ突入。これまでと違って根曲がり竹少なくなったし潅木も全体的に薄く、かなり登りやすくなった。尾根に復帰しても根曲がり竹は少なくなり、本来予想していた植生になった。標高910m付近では10本程度のまとまった杉があり、この直下だけは藪皆無で歩きやすかったが、これは植林ではなく自然林だろう。

 標高940m付近では最も傾斜がきつくなり露岩が混じるが岩登りが必要なレベルではなく、控えめに地表に姿を見せた岩の間を登っていく。この上部も藪は比較的薄いままで発達したブナ林の尾根を登っていく。たまにブナの幹に古ぼけた赤ペイントが見られたり、1箇所だけだがピンクリボンがぶら下がっていたりと、この尾根の利用者は少ないながら昔からいるようだ。ただし道は無い。

 標高が上がるに従って徐々に新雪が多くなり、標高1000m付近に達すると藪の枝の上に雪が乗った状態となり、体が濡れるようになったので雨具の上着を着用。下半身はロングスパッツがあるので多少は防御可能で、もう少し藪が濃くなってから着用しよう。安物なのでゴアと違って通気性が悪いので、これを着たまま体を動かすと汗だくになってしまう。でも安物だから藪漕ぎでボロくなっても問題なし。

 標高1080mで尾根の傾斜が緩やかになり、地形図で破線が谷から尾根に上がる場所付近から笹が目立つようになった。大した密度ではないのだが、笹はそれまでの落葉潅木と違って盛大に新雪を葉に乗せているので突っ込むと盛大に濡れてしまうため、ここで雨具のズボンを着用。登山用の雨具と違って靴を履いたまま雨具を着用できる構造になっていないため、登山靴を脱いで着用。この点も大きな欠点だが、頻繁に着脱する必要が無ければ問題にならないので、寒い冬場などはいいだろう。

 この場所は西側の谷がすぐそこに接近していて、その中は明らかに笹が薄いので、ここで尾根を下りて谷を登ることにした。新雪で滑りやすい斜面に注意してトラバース気味に谷へ入ると、新雪に覆われているがそれまで見られなかった硬く締まった古い残雪が登場。やっと残雪の山らしくなってきた。あとはこれが尾根上にも残るようにならないとこの先も藪漕ぎが続いてしまう。今は日当たりのいい南斜面を登っているので、県境稜線の北斜面側なら残雪が期待できるかもしれない。

 標高1120m付近で谷の中が潅木藪に覆われた場所が登場、右手の尾根に登って迂回する。地形図ではここには尾根は描かれていないが、谷のすぐ東側に存在する。尾根上は雪が消えて笹や根曲がり竹の藪だが、濃さはまだまだ序の口だが、今は葉に乗った雪が厄介だ。すぐに谷に復帰して藪を回避する。

 傾斜が緩めば長棟峠に到着。峠には立木が無く真っ白な雪原が広がっていた。地形図では破線が通っているが、実際に道があるのかは積雪のため全く判別できなかった。峠は幅は狭いが奥に向かってほぼ水平に谷筋が続いている。まずは先に高幡山に登ろうと計画しているが、右手(東)斜面は谷筋と違って古い残雪は皆無で新雪が乗った笹が一面を覆っている。もう少し北に進んで県境の北側斜面なら雪があるかもしれないので、少しの間、広い谷筋を進んでいく。やや積雪が増えたが10cm程度で、無雪よりは疲れるがワカンが必要なほどではないのは大助かりだ。なお、池ノ山へ続く西側の斜面は古い雪がたっぷりと残っているようで、笹の緑はほとんど見えず真っ白だった。東斜面よりも西斜面の方が雪解けが早いのが一般的なので、当然といえば当然か。

 北に移動しても尾根上には古い残雪が見当たらないため、できるだけ笹が薄い箇所から尾根に取り付いた。尾根続きの横岳では県境稜線上は猛烈な根曲がり竹の激藪だったが、この界隈は標高が低い影響か、思ったよりは根曲がり竹の藪は濃くはなく、新雪さえ積もっていなければ快適に藪漕ぎできるレベルであった。

 1200m峰が近付いて傾斜が緩み始めると尾根の北側に古い残雪が現れて根曲がり竹が見えない箇所が出てきたので、そこを選んで進んでいく。新雪が乗っているので楽ではないが、藪の中を歩くよりは遥かに楽でスピードアップだ。しかし残雪の量は多くはなく、おそらくあと1週間くらいで消えてしまうであろう。この時期は寒気が入らないと下手をすると下界で+25℃を越えるような気温になるので、雪解けのスピードは猛烈だ。

 1200m峰を越えると平坦な尾根に変わり、尾根直上から南斜面は立った根曲がり竹が出ているが北側は雪面なので、てっぺんより僅かに北側を巻いて進んでいく。この付近の県境稜線には道は無いが、ブナの幹には古い赤ペイントが点在している。

 1170m鞍部は地形図を見ても分かるように東西に細長い谷状で、明確な最低点ははっきりとはしない地形だ。尾根の末端まで辿ると、鞍部の先は雪が消えて根曲がり竹に覆われた南斜面を登ることになるので、尾根の途中で北斜面を下り谷筋へ向かい、県境尾根のすぐ西側の谷地形を登ることにした。もちろん、この谷の方が残雪が有る確率が高いからだが、ここからは尾根に邪魔されて谷の様子は見えない。谷というよりも平原に近い立ち木皆無の雪原を横断し、県境稜線の左側を迂回して奥の谷にトラバース。谷の入口も木がほとんど無い広い平坦地で、進むに従って徐々に幅が狭まって谷らしくなる。予想通りこちらは一面の雪に覆われて笹は見えず、水の流れも雪の下だ。ただし部分的に雪が薄くなった箇所があり水音が聞こえることも。そんなときは左右のどちらかを迂回した。1箇所だけは小さな滝らしく流れが出ている場所があったが、急ではあるが左岸側を高巻きした。

 やがて谷が斜面に吸い込まれる箇所で右手の尾根に乗るが、その上部は雪が乗った笹が出てしまっていて突っ込むのはイヤらしいので、尾根右手の雪に覆われた浅い谷を横断して残雪に覆われた斜面を突き上げることにした。新雪が重いが笹に突っ込んで頭から雪を被るよりはずっといい。

 小尾根を登って1320m肩で県境稜線に復帰。この先はずっと残雪が続いて笹はもう見えず、高幡山山頂まで快適に歩けそうだ。山頂はもうすぐのはずだ。積雪は長棟峠とほとんど変わりがなく約10cm程度であった。

 高幡山山頂は残雪に覆われて三角点は雪の下だが、近くの立ち木の高い位置に複数の目印が結ばれていた。現在の雪面から2〜3mくらい高く、残雪期ではなく積雪期に登ったときのものだろう。山頂標識は見当たらない。周囲はブナに覆われて大展望とはいかないが、東側のみ開けて真っ白な薬師岳が見えていた。その左手には横岳。横岳に続く尾根も真っ白で笹の緑は見えず、今なら藪漕ぎ無しで到達できるだろう。東笠山や西笠山は横岳が邪魔して見ることはできない。

 山頂で休憩を始めてすぐに人の声が。こんな場所に他に登って来る人はいないはずで空耳かと思ったら、東を見ると人の姿が! 熊ならいても不思議はないが、まさかここで人に会うとは予想しなかった。ワカンを履いた単独の男性で、私より少し年下かなぁと思われる年齢層に見えた。しばし話をしたが、富山在住で山登りを始めてまだ半年とのことでびっくり。初心者にしては登る山がマニアック過ぎるが、渓流釣りをやっていたとのことで納得。冬場も県内のあちこちに登っていたそうで、始まりが秋だったので本格的な夏山は未経験とのこと。今回の出発地は佐古集落のゲート前とのことで、大和田廃集落の先から適当な尾根を登って県境に出てここに至り、これから横岳に向かうとのこと。元気な男性であった。

 彼が立ち話を終えて出発して少しして私も出発、池ノ山に向かう。このまま県境稜線を西に進んで山頂に達してもいいのだが、1200m峰を越えて、さらに長棟峠から1220m峰群を越える必要があり、それならこれらを巻いてしまおうと考えた。1200m峰の東側鞍部から長棟峠に繋がる谷を下り、1220mピーク群を巻いて1168m鞍部へ降り立ち池ノ山へ登る作戦だ。これならずっと谷や北斜面を巻くので、尾根上を歩くよりも残雪が期待できる。

 まずは1200m峰手前の1170m鞍部で県境稜線と別れて広大な谷を下っていく。谷は雪に埋もれて無雪期に水が流れているのか不明だが、深さは非常に浅いのでおそらく水があっても僅かだと思う。長棟峠から北に延びる谷に合流すると右岸側に林道と思しき平坦な棚状の地形が続くようになる。地形図の破線は林道だったらしい。これを辿って1168m鞍部へと続く林道に乗り換えてもいいのだが、その場合は余分なアップダウンが必要となるためこのまま等高線に沿って1220mピーク群を北側から巻くことにする。傾斜が多少きついものの最初は残雪が乗って藪も無く快適にトラバースできたが、やがて雪が消えて根曲がり木が連続するようになり、完全に藪漕ぎ状態に。北斜面なのになぜ雪が無いのか不思議だがこのまま進むのは大変な苦労が伴うのは確実で、標高差を損するが林道経由に切り替えることにする。急な雪面を下って雪に埋もれた谷を横断、対岸の急斜面をよじ登って林道に出ると木が生えていて、明らかに廃林道だった。でも雪が乗って藪は顔を出していないので問題なし。緩やかに下っていく。

 林道と合流する手前、標高1070m付近で左から沢が合流するが、こちらはやや流れが強く雪が解けて流れが顔を出している。廃林道が生きていた頃には暗渠か何かでこの沢を渡ったのかもしれないが、今は沢が廃林道を分断していた。沢の幅はさほど広くないので場所を選んで対岸へ渡った。ここから林道合流点まで100m程度だが、林道は頭上を通っているので残雪の急斜面をよじ登ることに。幸い、潅木藪は無いので楽に上がることができた。

 こちらの林道は路面上に潅木が突き出ることも無く、雪が解けた場所の路面状況を見る限りは現役のようだ。ただし、全区間に渡って普通車で通行可能な路面状況なのかは不明。たぶんオフロードバイクなら奥まで入れるだろうが。もしマイカーでここまで入れれば無雪期の池ノ山は藪の程度にもよるが、残雪期に飛騨側から登るよりも簡単かもしれない。

 地形図によると林道は1168m鞍部へと続くはずであるが、残雪状況を考えると県境稜線を行くよりも北側斜面の適当な枝尾根か谷を登った方が藪を回避できる公算が高いので、適当な場所で林道を離れて山頂北側へと続く谷筋を進もうと考えた。しかし、地形図に記載された林道のルートと実際の林道のルートが途中から整合しなくなった。標高1140m付近で林道を離れて右手の谷を登る予定だったが、この分岐点では林道はほぼ南へ直線的に延びるはずだが、実際の林道は西へ延びる谷の右岸へと続いていて、1168m鞍部へと続く林道分岐は判別できなかった。おそらくかなり以前に廃林道化して藪に覆われてしまったのだろう。目論見とは違うがこのまま林道を進めば山頂北側に出られそうなので好都合だ。

 積雪のためはっきりとしないが、標高1260m付近で林道は谷を離れて北側斜面を登っていくようで、カーブらしき広場で南へ針路変更。ここも雪に覆われた広い谷で、適当に高いところを目指せば山頂に達するだろう。振り返ると横岳から薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳と並んでいる。

 地形図ではこの付近に凹地があるはずだが左手直下に発見。普通、自然地形の凹地はカルスト地形のような緩やかなすり鉢状をイメージするが、ここにあるのはまさに穴。周囲は全周が崖に覆われて明らかに崩壊した痕跡である。池ノ山は神岡鉱山の山で、おそらく地下には網目のように坑道が走っているはずで、その一部の天井が崩壊してできたのだと思う。そうでないとすればこの地下には自然にできた洞窟があり、その天井の一部が崩壊したと考えるしかない。

 北斜面の小尾根を適当に登って南側の展望が開けた場所に出ると、薄曇の前方の空に虹状の色が付いていることに気付いた。それまでは日陰だったのが急に日向に出て目の錯覚かと思ったが、時間経過してもやっぱり虹のような色が付いて見える。そして薄雲を被った太陽を見上げると太陽を中心とした円周状にグルっと虹が囲んでいた。ハロである。そして南の空に見えている虹状の帯は2つ目の円周を成していた。半径が大きいので円弧ではなく水平に見えたのだった。これが環水平アークで、私も生まれて初めて見る現象だった。そして最初は気付かなかったがよ〜く見ると、太陽を円周の一部とするハロのような円も見えている。ただしこちらには虹色はなく白だ。これは幻日環と呼ばれる現象でかなり珍しく、私も見たのはこれが初めてだった。全て上空の薄雲が原因で、しかも太陽の高さも関係するらしい。この日は中部地方で広範囲でこれらの現象が見られたようだ。結構長い時間継続し、この付近ではたぶん1時間近く見えていたと思う。

 適当な枝尾根を登り県境稜線に合流すると想定外の事態が。なんと刈り払われた道が存在したのだ。私が稜線に出たのは山頂の北側なので、少なくとも池ノ山から北側の県境には道が続いていることになる。ただしどこまで続くのか、どこが起点なのかは不明だが、常識的に考えれば往路で歩いた林道のどこかに繋がっているはずだ。もしそうなら無雪期の藪漕ぎは不要ということになり、池ノ山は比較的容易に登れる山に変わるかもしれない。

 邪魔な潅木が刈り払われて整備された県境を登りきった開けた場所が池ノ山山頂だった。周囲は背の高いブナが多くあまり展望がいいとは言いがたいが、主に南東方面はそこそこ展望が得られる。色が薄くなってきたが、まだ環水平アークが見えている。山頂の積雪量はそれほど多くはなさそうで、あってもせいぜい1m程度と見た。道はあっても山頂標識は見当たらない。道は登山道ではないので当然か。薄曇なので柔らかい日差しの中で休憩。ほぼ無風状態でこれでも体感的には十分暖かかった。さすがに池ノ山では他に人に会うことは無かった。

 帰りは県境稜線を長棟峠まで歩くことにする。藪が出ている箇所は北に迂回するだろうが、できるだけ県境を歩いてみるつもりだ。刈り払われた道は山頂から東側には無いだろうと思っていたが、最初は積雪で分からなかったが雪が減ってくると明らかに刈り払われた道筋が登場。さて、どこまで続いているだろうか。しかし積雪のため道形を追うのは困難で、標高1330m付近で尾根がバラけて根曲がり潅木が目立ち始めた場所では既に道から離れてしまったようで、藪回避を優先して尾根北側の残雪帯を迂回、標高1290m付近で県境に戻ると再び刈り払われた道に合流した。少なくともこのまま1168m鞍部まで続くのかと予想したが、標高1240m付近で道は右へと下ってしまった。このまま下れば跡津川沿いの林道のどこかに出るはずだが、あるとすれば393m標高点付近の沢との交差点か、それとも777m標高点のある尾根との交点か。どこに出るのか興味があるが、登り返しの可能性を考慮すると今はそれを調べる体力的な余力は無い。

 1168m鞍部は雪に覆われて廃林道が越えているのは判別不能だった。ただしまっさらな雪原なので笹や根曲がり竹はあっても潅木藪は無いらしい。鞍部から1220m峰群への登りは南向きなので予想通り雪解けが進んで藪が出ていたが、思ったよりは藪は薄くさほど障害にならなかった。そのままピーク群を素直に越えて行くが、以降はずっと残雪に覆われて快適に歩くことができた。

 最後のピークを越えて長棟峠に向けて下るが、ここは尾根上を進むと峠ではなく1190m峰に出てしまうのでルートに注意。長棟峠からこの斜面を見上げたときにずっと残雪があり根曲がり竹は見えなかったので、ここは安心して下ることができた。枝尾根のてっぺんは藪が出ているが北側は問題なし。そして長棟峠で往路の自分の足跡に合流した。

 ここからは快適な残雪とはおさらばしてほぼ往路を辿って藪漕ぎ再開。往路では体を濡らした枝に乗った新雪もすっかり解けて枝は乾燥し、もう雨具は不要。ただし往路の足跡は完全に消えているので進路は要注意。でもこの尾根は大きな枝尾根は無いので素直に直進すれば外すことはないし、外してもすぐに気付けるだろう。標高940m付近の露岩帯だけは急な下りで、往路に通過した場所はすぐに分かった。標高790m付近の水平道は往路は西側から斜面を登ったが下りでは尾根直上を辿ったまま道に交差。この付近は藪が最も深く、道も完全に藪に埋没していた。

 さらに下って杉の植林帯に入れば藪とはおさらばで、最後の急斜面を慎重に下って林道に降り立った。

 沢で顔を洗って林道ゲートまで上がってみた。高幡山で出会った男性の車がまだあるかと思ったが、駐車してあるのは京都ナンバーのワンボックスだった。登山者のものか山菜取りのものか不明だが、地元から離れたナンバーということは登山者の可能性が高いだろうか。ここからだと男性と同じく横岳の可能性が最も高いかな。

 細かな落石が多い林道を下り、跡津川集落に入れば安心して走行できる路面状況に。今回も帰りがけにかぐらトンネル入口を撮影。休日なので入口は閉鎖されているかと思ったら開いたままで、もしかしたら連休中も工事をやっているのかもしれない。ご苦労様。

 明日は近くの漆山岳の予定で、神岡市街地で買い物をしてそちらに向かった。

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ